2019/01/03

五輪 万博 ひとつのデザイン

2020年、観光客数を現在の二倍、
4000万人に増加させると政府発表されている。
倍増は少々大げさかもしれないが、
東京五輪や大阪万博は実際執り行われる。
年々増加する観光客に沸く、大阪やお隣の京都では
ホテル、マンション需要による建設が相次いでいる。

またホテルに限らずゲストハウスや民泊など、
ちまたには既存の建築に手を加えた建物がそこかしこ。
ある日“しれっと”建っていることに驚きを隠せないでいる次第。

観察するに今は町屋風に古民家風、昭和の住宅風など
“日本風”住宅で外国からのゲストを手厚くおもてなししようとする風潮が根強い。
しかし日本風よろしく、屋台のような安い普請の建物も散見し、
初めて日本を体験するゲストにとってはどうなんだろうと考えてしまう。

他方、インターデザインの顧客に限れば、
むしろ“様式的”建築意匠を、
新築やリノベに求むる声が今もって多くを占めている。
それは建築発注に手慣れた顧客であっても、
初めてデザインを発注してみる顧客であっても。

その現象は、“様式的”つまり欧米的意匠で建築することが、
威厳があり、品位があり、普遍である。。。建物になる。
ひらたく言うと、
堂々として、高級に見え、長持ちする。。。建物になる。
と云う思考からだと推察できる。

その考えはおおむね正解であり、
明治近代化以降、日本の公共、主だった建築はこの“様式的”意匠が主流を占め、
その主たる目的は、前述した理由に大きい。

1964年の東京オリンピックに1970年の大阪万博、
日本が上を向いて歩んでいたころ、
まだまだ街にはエラそうにしている建物がいっぱいあった。

このエラそうな様式的意匠は、
簡単にデザインできそうで、そう一筋縄ではいかない。
大学で学んだ建築史や海外の建材を駆使するという単純なものではなく、
実際に現地に赴き、時代々の歴史背景や文化、空気感を理解し、
そして現在の技術やコストを加え、アレンジしなくてはならない。
新築、リノベを問わずに。

ただし使い方は自由で良いだろう。
コンクリート打ち放しビルのファサードだけが様式的でも別段構わない。
日本の“看板建築”は上手な成功事例。
日本の技術と都合を駆使した、当時の熟練工の遺産が、
全国で保存されている。

瓦葺の日本家屋に溶け込んだ欧米意匠の役所や銀行に学校、
すでにその景観は日本人のDNAに刷り込まれたものかもしれない。

近代化以後150年、日本の文化はそろそろ熟年期を迎える‥‥‥
新しいデザインだけで東京や大阪を創るのではなく、
この国が青年期だったころの景観も適度に修復してゆくほうが、
人の心に優しい街になるだろうと想う。


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