2022/02/22

上町現代伽藍

その昔、法然上人が台地の南に一心寺を興したことから上町台地は聖地とされてきた。
寺町としての今日の姿になるのはそれからずいぶん後の話。
大阪市民に人気の高い上町台地は多くの寺社だけでなく、
いくつかの教会も見受けられるが、いずれにせよ厳かな台地であることに間違いはない。

先日この上町の台地に無事完工した集合住宅、寺町にふさわしく現代的な伽藍がコンセプト。
無駄を排した金属質の外壁に突き刺さる、幾重もの小庇が塔建築を思わせる。
雲中菩薩よろしく、塔足元には三次元加工した花崗岩をあしらい菩薩様の飛雲として表現している。
塔中央には神々しく開けた山門があり、その先の桃源へとつながる。
その建築全体のシルエットは、光輪を背に抱く菩薩像のようでもある。

文字で起こせばどれほど神仏的な建築かと思いきや、実際は実にシンプル。
台地の寺町にも似つかわしい現代的でクセのない形状。
御仏を前に自然と手を合わせるわたしたち日本人の精神世界を具現化した建築は、
上町台地の現代伽藍である。